血腫の除去について
他の馬からの蹴傷や、馬房内での激しい打撲。
大腿部や臀部の深部で筋肉内血腫が起きると、
一度大きな死腔ができることで自然吸収が極めて難しくなります。

時間が経つと、中の血液が血餅となり、繊維化して硬くなってしまうため、
単純な穿刺による保存療法では対応しきれなくなります。

結果として、
巨大な硬結が残ったり、細菌が繁殖して化膿しやすくなったりしています。
こうした難治性の血腫に対しては、保存療法を諦めて外科的な介入が必要になります。
まずは血腫の最下点に十分なサイズの開窓(皮膚・筋膜切開)を確保し、
貯留している血液や血餅を完全に排泄させます。

この際、ポケット内にある線維性の隔壁をしっかりと破綻させ、
全ての内容物がスムージに流れる道を作ることが重要です。
外科処置の後は、毎日のケアが治りを大きく左右します。
空洞となった死腔をすぐに縫合してしまうと血腫が再発するため、
開放創のまま管理します。
生理食塩水などを用いて、
ポケットの最深部まで、残存する血餅や壊死組織を毎日洗浄して感染を防ぎます。
さらに、下部の開放窓から確実に排液させ、
ポケットの深さを確認しながら、経過を追い、
ポケットの1番奥(上部)から外側・浅い方へ向かって肉芽組織を盛り上げ、
ジワジワと空間を閉塞させていくようコントロールします。
大腿部の頑固な血腫は、メスを入れて終わりではなく、
その後の毎日の地道な洗浄と死腔の空間管理が完治への1番の近道です。
そうして、
こうした毎日の洗浄や状態管理を支えてくださる牧場スタッフの方々との連携も、
綺麗に治すために欠かせない大切なポイントです。
獣医師と牧場スタッフの方々が同じゴールを見据え、
一丸となって日々処置をやり抜いていくそのチームワークこそが、
現場において何より醍醐味であり、最もやりがいを感じる瞬間でした。
O