下顎骨の骨折・歯折について
こんにちは。
滋賀県もようやく梅雨が明け、本格的な夏の暑さが到来してきそうです。
人にとっても馬にとっても厳しい季節が始まりますが、
日々の体調管理や熱中症対策にはより一層気を配っていきたいところです。
さて今回は、下顎切歯部の骨折・歯折について、話していきたいと思います。
馬の骨折といえば四肢のイメージが強いかもしれませんが、
頭部の外傷、特に切歯の損傷も、決して頻繁ではないものの
突発的な事故として時折遭遇する疾患です。
多くは放牧中の蹴り合いや、馬房の柵に無口や顎を引っかけるといった強い衝撃によって発生し、
下顎からの出血や流涎、採食不良などをきっかけに発見されます。
先日も、口腔内からの出血と流涎を主訴に診察した一頭の馬がいました。
採食は可能で、馬はあまり気にしていない様子でした。
下顎骨の一部が正常な歯列から外れており、周囲の歯肉には明らかな裂傷が認められました。

レントゲン検査を実施し、骨と歯根部の損傷状態、および変位の程度を確認します。

レントゲンでも切歯を支える土台ごと変位している状態であったため、
2次診療施設にて、整形外科用ワイヤー(矢印)と結束バンド(点線矢印)を併用した、
外科的な固定手術が実施されました。

痛みと炎症をコントロールするための非ステロイド系抗炎症剤(NSAIDs)と、感染を防ぐための抗生物質の投与を行い、
あわせて定期的な口腔内洗浄を継続してもらいました。
また、強固な固定が得られたことにより、術後から比較的すぐに給餌を開始することができました。
その後、経過のレントゲン検査にて損傷部の良好な安定化と組織の修復を確認し、
術後約1ヶ月のタイミングで固定具を抜去しました。

抜去した箇所の組織には大きなトラブルも見られず、歯列もしっかりと安定した状態を取り戻しました。
馬の下顎の損傷は、一見するとショッキングな外傷ですが、
早期に適切なレントゲン評価を行い、的確に固定を施すことで、
非常に高い確率で元の状態に戻すことが可能です。
今後もこうした突発的な外傷に対しても迅速かつ正確なアプローチをしていきたいと思います。
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