育成牧場の駆虫
こんにちは。一年目のHTです。
先日、青森県を震源地とする大きな地震がありました。
日高でもかなりの揺れがありましたが、幸いにも人や物に別状はありませんでした。
改めて自然災害の恐ろしさを実感したところです。
さて、今回は寄生虫のお話です。
日高ではどんな寄生虫がどんな悪さをして、どんな薬をどうやって使うのか。
特に育成牧場での実践にフォーカスしてまとめてみました。
一緒に見ていきましょう。
<代表的な競走馬の寄生虫>
○小型円虫

・現代の馬寄生虫で最重要
・大半の馬が暴露していて、駆虫耐性も強く問題になる
[症状]
・下痢、体重減少、毛艶不良
・冬〜春に大腸粘膜からシストの出芽(幼虫出芽症)→ 重度の下痢、死亡例も
○普通円虫

・五大疝痛の一つ「血栓性疝痛」の原因
・かつては致死的な寄生虫として恐れられていたが、現在では稀
[症状]
・腸間膜動脈に移行して血栓、梗塞を起こす
○馬回虫

・特に1歳前後の若馬の最重要寄生虫
・イベルメクチン系に耐性が多いため、実務上とても問題。ピランテルが第一選択薬
[症状]
・成長不良、咳(幼虫移行期)
・ 大量駆虫後の腸閉塞で疝痛→死亡例も
○葉状条虫

・盲腸・回盲部に寄生
・以前よりは減ったが、疝痛の原因として未だに重要
・プラジカンテルが効く
[症状]
・回盲部の運動障害 → 疝痛(間欠性の疝痛が典型)
<使用する駆虫薬>
○Exodus

主成分:ピランテル(テトラヒドロピリミジン系)
○エクイバランゴールド

主成分:イベルメクチン(マクロライド系)&プラジカンテル
○AMMO

主成分:オキシフェンダゾール(ベンズイミダゾール系)
我々日高診療所ではこの3種の駆虫薬を二ヶ月間隔で使っています。
複数種類をローテーションすることで耐性虫の発生を予防します。
駆虫薬の単剤連続使用をすると、
淘汰圧による突然変異で耐性獲得→ その虫が生き残り遺伝子を次世代へ→ 耐性蔓延化
といったプロセスでその薬が効かなくなります。
そのため使用薬剤のローテーションは必要不可欠なんですね。
<駆虫薬とそのターゲット>
| 商品名 | 主成分 | 小型円虫 | 普通円虫 | 馬回虫 | 葉状条虫 |
| Exodus | ピランテル | 耐 | △ | ◎ | |
| エクイバランゴールド | イベルメクチン | △ (耐) | ◎ | 耐 | |
| プラジカンテル | ◎ | ||||
| AMMO | オキシフェンダゾール | △ | △ | ◎ |
表にまとめるとこんな感じです。
小型円虫はほとんどの駆虫薬に耐性を持ち、その上大腸粘膜内でシスト化しているステージでは薬が効きません。
モキシデクチン(マクロライド系)はシストをターゲットにできますが、やはり完全排除は難しく、あくまで許容感染レベルで抑え込むといった駆虫のスタイルになります。
馬回虫のイベルメクチン耐性化も世界的に問題です。
近年ピランテルに対する耐性化も海外で報告が出始めており、早急な対策が望まれています。
今回はここまで。
たかが虫、されど虫。
侮れない存在です。
HT
◯参考文献(写真出典)
・馬の寄生虫病 [公益社団法人中央畜産会 発行]