診療で使う薬

診療で使う薬

こんにちは。一年目のHTです。

 

北海道では秋を飛び越えて冬がやってきました。

まだ10月だというのに初雪です。困ったものですね。

 

さて、今回は現場でよく使う薬剤のお話です。

その馬に必要な検査、治療に基づき様々な薬を選択して投与、処方しますが、

その中でも使用頻度の高いものを抜粋して解説していきます。

一緒に見ていきましょう。

 

 

[鎮静剤]

人馬の安全のため、診断や治療の際に用います。

鎮静作用、鎮痛作用、筋弛緩作用があり、馬がリラックスした状態で立位での処置が可能です。

レントゲン撮影(後肢の持ち上げを伴う)、エコー検査、ショックウェーブ治療、歯科治療など、

使うタイミングは枚挙に暇がありません。

 

◯デトミジン

・α2アドレナリン受容体作動薬。

・鎮静、鎮痛、筋弛緩作用すべて中〜強程度。

・効果発現は3~5分ととても早く、1~2時間で自然に覚醒する。

・最も代表的な馬の鎮静剤であり、ブトルファノールとの併用が一般的です。

 

◯ブトルファノール

・オピオイド系鎮痛薬。

・単独使用だと中程度の鎮痛作用。

・デトミジンとの併用で、鎮静、鎮痛作用を強化します。

 

◯アセプロマジン

・フェノチアジン系鎮静薬(ドーパミンD2受容体遮断)。

・穏やかな鎮静作用。ヒト分野では精神安定剤として用いられる。鎮痛作用はほとんど無い。

・うるさい馬、危険な馬には「デトミジン+ブトルファノール+アセプロマジン」で対処します。

・ペースト状のものもあり、注射を嫌がる馬を落ち着かせるのに重宝します。

 

 

[鎮痛・消炎剤]

痛みを緩和し、炎症を抑える薬です。

代表的な用途は疝痛(ハライタ)や、関節炎、外傷、術後管理など。

胃潰瘍や腎障害のリスクが有るため長期使用はNGです。

注射薬のほかに、経口投与できるペースト剤もあります。

 

◯バナミン

・一般名:フルニキシンメグルミン

・NSAID(非ステロイド抗炎症薬)。

・特に内臓痛には効果抜群で、疝痛に対する最も代表的な鎮痛・消炎剤。

・速効性、鎮痛力、抗炎症作用すべて優れた、第一選択薬です。

 

◯ビュート

・一般名:フェニルブタゾン

・NSAID(非ステロイド抗炎症薬)。

・バナミンよりも鎮痛力は弱いが、抗炎症作用は強い。

・主に骨格筋系の痛みに対して使用します。

・タブレットタイプもあるので、注射での継続治療が難しい場合にも処方が可能です。

 

[抗生剤]

細菌感染症に対する治療・予防薬です。

代表的な用途は関節炎、外傷、術後管理、皮膚病など。

抗生剤と一口に言っても様々な作用機序、スペクトルがあり、奥が深い薬です。

 

◯マイシリン

・ペニシリン+ストレプトマイシンの合剤。

・ペニシリンはグラム陽性菌に効果あり。

・ストレプトマイシン(アミノグリコシド系)は多くのグラム陰性菌に効果あり。

・そのためスペクトルが広く混合感染に強い。

・特に外傷や感染症初期、汚染を伴う手術の術後治療等に第一選択薬として用います。

 

◯ペニシリン

・強力、古典的、安価

・グラム陽性菌のみに効果あり、スペクトルが狭い。

・そのため陽性菌の単独感染に対してはマイシリンよりも効果的だと考えられています。

 

◯コアキシン

・一般名:セファロチン

・第一世代セフェム系抗生物質

・グラム陽性菌+陰性菌両方に効果あり。

・最もスペクトルが広く、安全で使いやすい。

・組織移行性が高く、深部の感染に有利。

・そのほか、ワセリンなどの軟膏基材に混ぜたものを繋皸(けいくん)用の軟膏として処方します。

繋皸(けいくん)について

 

 

これらのほかにも、点眼薬、抗アレルギー薬、ステロイド系消炎剤等いろいろな薬がありますが、

また機会があればご紹介します。

今回はここまで。

 

 

最後にくすりと笑える小話をひとつ。 

最近、コンビニでお弁当を買ったお年寄りがお箸を落としていったので、拾ってあげました。

一日一膳。

おあとがよろしいようで。

HT

 

参考文献

[獣医薬理学(コアカリ準拠) 近代出版]

 

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