(眼)アトロピンについて

(眼)アトロピンについて

今日は馬の眼科治療でよく使われるアトロピンについて、お話しします。

馬ではぶどう膜炎の治療でよく用いられます(角膜潰瘍に併発して起こる場合も、それ以外でも)。

アトロピンは、抗コリン作用を持つ薬で、副交感神経を抑制し交感神経を優位にする作用があります。

具体的には、
①瞳孔散大筋の収縮・瞳孔括約筋の弛緩により散瞳が得られるため、虹彩後癒着を防ぐ
②毛様体筋を麻痺させることで毛様体筋痙攣を緩和し、痛みを緩和する
という効果があります。

(*他にも毛細血管・上皮間細胞結合部を狭くして、毛細血管からの血漿流出を軽減させる効果もあるらしい。)

効果は正常な眼では数日間持続しますが、ぶどう膜炎の炎症が強い場合は 数時間しか効果が持続しないこともあります。

そのため例えば「どの位の頻度で点眼したら散瞳するのか?どのくらいの時間持続するのか?」という点を評価することは、眼内の炎症の刺激の指標となります。

例えば、この写真のぶどう膜炎の馬では、アトロピン点眼液1%1回の使用では十分な散瞳が得られませんでした。

また馬では眼の状態を現場でしっかりと評価ができないこともあり、あまり病態を考慮せず ” ぶどう膜炎 = 散瞳剤 =アトロピン” という認識で使用されていますが、

小動物やヒト医療では、散瞳した状態が続くと 虹彩前癒着や隅角狭小化による眼圧上昇が起こる可能性があるため、病態等に合わせてアトロピン以外の散瞳剤を選択して使用するそうです。

他には、馬では腸の動きが弱くなる場合があるので、蠕動音の確認やボロの状態など 疝痛兆候がないかを確認することが必要になります。

上でも出てきたこのぶどう膜炎の馬は、時間経過もあり 一応状態としては良化は見られるのですが、角膜の白濁が大分残ってしまっています。引き続き、経過をみていきたいと思います。

***参考資料:「馬医者のための眼科学」全国公営競馬獣医師協会***

ちなみにぶどう膜 uveaの名前の由来は、血管に富んで見た目が黒っぽく 果物のぶどうに似ているからというものだそうです。

美味しいぶどうの季節もそろそろ終わりですね。

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