
馬の眼
こんにちは。
名古屋はやっと春の訪れを感じたと思ったら、
もうすでに夏がにじり寄ってきています。
今回は馬の眼についてお話をしようと思います。
・位置・視野


知っている方も多いかと思いますが馬の眼は人間に比べて外側についています。
視野はおよそ350度と広く、真後ろ以外はほとんど全方位を見ることができます。
しかし、視界のほとんどを片眼で見ているため対象物との距離を測ることは苦手です。
逆に猫などの肉食動物は眼が正面についています。
視野はおよそ180度、視界のほとんどを両眼で見ることが可能で距離の把握が得意です。
このような位置の違いは外敵から襲われないように常に全方位を警戒している草食動物と獲物を捕えるために距離の把握が必要不可欠な肉食動物との違いです。
・色覚
人では色を感じる細胞である錐状体が3色型であるのに対し、
馬の錐状体は2色型であり赤や緑を認識することはできていないとされています。
また人に比べて錐状体の密度が低いため、色調も人ほど鮮明ではありません。
・構造


画像:左「馬臨床学」,緑書房,p164より,図6-1
右「カラーアトラス獣医解剖学」,チクサン出版社,p645より,図16-3
眼の部位は外的な刺激などから眼を保つ強膜、脈絡膜、網膜、
眼に入った情報や光を伝達する角膜、水晶体、硝子体、網膜、視神経などがあります。
また人にはない構造で瞬膜(第3眼瞼)と輝板(タペタム)が存在します。
これらの構造は馬以外に猫や犬にも存在します。
瞬膜はまぶたと同様に外部刺激から眼球を守るもの、
輝板は動物の眼が光る原因であり、光を反射し増幅させるものです。
輝板(タペタム)について詳しくは馬の瞳について – カワタエクワインプラクティスをご覧ください。
馬の眼球の直径はおよそ4.5cmで人の眼球の2倍の大きさがあり、
重さは約100g、陸生動物ではキリンに次ぐ大きさです。
馬の眼球はきれいな球形ではなく、やや歪んだ扁平型をしています。
人では焦点を合わせる際、
水晶体の厚みを毛様体筋の収縮と弛緩によって対象物の距離に合わせて変化させています。
一方で馬の場合は、眼球の歪みを焦点合わせに利用しています。
馬の水晶体は眼球同様かなりの大きさであるのに対し、毛様体筋の発達は貧弱です。
毛様体筋の動きだけでは焦点合わせは不完全なため、
遠くを見る時にはあごを引き上目使いに
近くを見る時には逆にあごをあげて対象物を注視するという動きをすることで焦点を合わせています。
私はこのような焦点あわせの行動をしっかり見たことがないので、
次回は馬が焦点を合わせているところの撮影に挑戦したいと思います!
MK