「肢が腫れた」

「肢が腫れた」

こんにちは。

牧場や競馬場では「肢が腫れている」や「跛行している」といった稟告で診察をすることが多いです。


↑管掌側に腫脹がみられる


診察のおおまかな流れとしては問診→触診→検査→診断→治療となります

問診ではいつ、どこで、どのような状況で、跛行や患部の腫脹が見られるようになったのか。また削蹄や装蹄の時期、運動や休息で変化するか、治療の有無、飼養管理状況などを聞き取る必要があります。

触診では炎症の5徴候「発赤、熱感、腫脹、疼痛、機能障害」があるかを判断していきます(発赤は毛が生えているため見られないことが多いです)。


ひとくちに「腫れている」といっても

腱組織、靭帯組織が肥大しているのか、骨が増生しているのか、関節液が増量しているのか、皮膚のような軟部組織が肥厚しているのか、判断する必要があります。

また跛行している馬では疼痛のある部位を特定し、疼痛の原因のケアが必要となります。

そのため触診では以下の図や写真のように肢を挙上して疼痛の有無を判断します。

↑左から、浅指屈腱の触診、蹄鉗子検査、球節の屈曲検査(緑書房 馬臨床学より)


↑深指屈腱の触診


↑蹄球の触診

↑管(第3中手骨)背側の触診



臨床的に運動器疾患の原因となりえる箇所をピンポイントで触診することが次の検査や診断につながります。

触診での所見はかなり主観的になるので炎症の度合いをグレード付けすることが勧められます。

グレードをつけておくことで治療や経過によってその炎症が悪化しているのか、良化しているのかを判断する材料になります。

また触診する順番やルーティンがあれば、患部の所見の見落としもなくなります。


重要なのは、1つの肢や1つの原因にとらわれず、あらゆる可能性を考えて触診し、そのなかで跛行の原因部位を特定することです。

例えば、触診は異常肢だけでなく、健康肢にも実施する必要があります。

また健康肢との比較をすることも重要です。



触診にあわせて、診断麻酔やレントゲン検査、エコー検査、その他画像検査を実施することでより病態を理解することができます。

たとえば冒頭のような管掌側の腫脹でもエコーでは

浅指屈腱の像がみられる場合や

皮下組織の腫脹が重度に認められる場合があります。


NM


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