胃の内視鏡検査
先月、今月と胃潰瘍疑いの症例の内視鏡検査をする機会がありました。
そこで今回は胃の内視鏡検査方法について記載します。
馬の胃の構造や胃潰瘍については以前のブログから。
まず、胃の内視鏡検査前には準備が必要です。
成馬の場合、8~12時間(最低でも14時間とする報告もあります)
の絶食と1~4時間の絶水を行います。
固形飼料を食べていない子馬の場合は検査の2~4時間前まで授乳が可能です。
固形飼料を食べている子馬の場合は検査の2~4時間前まで授乳は可能ですが
8~12時間、固形飼料を控えます。
絶食中は残っている乾草や敷料を食べてしまうのを
防ぐために馬に口カゴをつけます。
口カゴをつけていても敷料を食べてしまうことがありますので
口カゴの下に穴が空いている場合はテープで塞ぎます。
内視鏡スコープは3mの長いものを使用します。
通常、スコープが鼻腔を通過することは馬にとっては不快ですので
鎮静剤と鼻捻子(鼻ネジ)を使用します。
鼻孔からスコープを咽喉頭まで進めていき、
披裂軟骨小角突起の奥にある食道の入口から挿入します(矢印)。
このとき、無理に食道にスコープを押し込もうとせず、
嚥下のタイミングでスコープを飲み込ませるようにして通過させます。
無理にスコープを食道に押し込もうとすると
スコープが誤って軟口蓋から口の中に入り、
ガリッという音とともにスコープ損傷という悲劇が起こります。
(過去に経験があります…)
嚥下がなかなか難しい場合は水をかけます。
スコープをゆっくりと進めながら食道の中も観察していきます。
食道は蠕動運動がありますのでゆっくりと進めます。
ちなみにこちら↓は気管です。
食道と違って蠕動運動はありません。
成馬の場合、胃の入口(噴門)までは通常
鼻孔から170~180cmの位置にあります。
胃に到着です。
胃壁、とくに潰瘍には食渣がついていることがほとんどですので、
スコープの生検チャンネルから水をかけて洗い流す必要があります。
食渣を洗い流すと潰瘍が出てきました。
潰瘍はプロトンポンプ阻害薬のオメプラゾールで治療します。
治療前後の検査結果についてはまた次の機会に。
UK