腺疫について
こんにちは。
5月に入りだいぶ暖かくなってきましたが、
まだまだ朝晩は寒く、1日の気温差に驚く日々です。
今回は腺疫について書いていこうと思います。
腺疫は細菌の感染によって起こる馬科動物に特有の伝染病です。
若い馬ほど感染・発症しやすく、冬季から初春頃に多いです。
馬の移動、集合などへのストレスが発症の引き金となります。
発症すると膿汁や鼻汁中に細菌が多量に存在し、
馬同士の接触、保菌動物(ヒトも含む)や
汚染された水や飼料などによる経口もしくは吸引感染により起こります。
腺疫に感染した馬は、
発熱、元気消失、食欲・飲水欲の減退、痛みによる嚥下困難、
漿液性の鼻汁、下顎リンパ節の腫脹
といった臨床症状を示します。
症状が認められてから1〜2週間が経過すると、膿瘍化したリンパ節が自潰します。
リンパ節からの排膿は
直接的に皮膚を破いたり、喉嚢内へ排出された膿が膿性鼻汁として鼻孔から漏出したりすること
により起こります。
排膿した馬は、次第に回復に向かい、約1~2週間後に自然治癒することが多いですが、
保菌馬となり、
他馬への感染源となる場合もあるため注意が必要です。
治療としては、ペニシリンやセフェム系第一世代の抗菌薬が有効です。
ただ、リンパ節肥大・破裂という不可避な病態経過が遅延してしまうため、
抗生物質療法は禁忌とされており、
温熱パックと外科的穿孔でリンパ節膿瘍の排液を促すことが推奨されているそうです。
予防としては、現時点では適切な飼養環境の整備および感染馬の隔離が重要です。
腺疫は、今の時期によく見かけ自然に治癒するイメージの疾患ではありますが、
感染が全身に及ぶと、場合によっては死亡、
または再発を繰り返し、出血性紫斑病、心筋炎、貧血などの続発症も引き起こしかねません。
わたしたちも腺疫といった感染症の伝播源になりうるため、
鼻ネジや開口器などの共有で使う器具の洗浄や消毒、こまめな手洗いなど、
改めて衛生面に気をつけて日々の診療を行っていきたいと思いました。
O