喉嚢について

喉嚢について

こんにちは。


春分の日が終わりましたが、栗東では春が来るどころか雪が降り、まだまだ寒い日が続きそうです。


さて先日、北海道から来てくださっている先生に「喉嚢」の内視鏡検査について教えていただきました。



「喉嚢」は解剖学的には耳管憩室と呼ばれますが、人には存在せず、馬や奇蹄目特有の器官です。


喉嚢は咽喉頭の上部に左右一対存在し、中隔で区切られています。


喉嚢の容積は300~500mlで内容は粘膜に覆われ、その直下に重要な神経、静脈および動脈が多数走行しています。





喉嚢の入口(耳管咽頭口)は嚥下や咳き込むなどして気道内圧が変化した時に開きます。

【馬臨床学より】



喉嚢を見る際は、内視鏡の鉗子孔から把持鉗子(ガイドワイヤー)を挿入し、耳管咽頭口から喉嚢内へ誘導します。

今回初めて行ってみて、なかなかガイドワイヤーが喉嚢内に入っても、馬が動いたり、ワイヤーが滑ったりして、上手く内視鏡を喉嚢内に進めていくのに苦戦しました。



喉嚢内に入ると以下の画像のようになっています。

左右の喉嚢はそれぞれ中央を縦走する舌骨で内側と外側に分けられ、内側には内頸動脈、外側には外頸動脈が走行しています。

その他にも、舌咽神経(第Ⅸ脳神経)、迷走神経(第Ⅹ脳神経)、舌下神経(第Ⅻ神経)などがみられます。


【カラーアトラス獣医解剖学より】




喉嚢を検査する上で、重要な疾患として挙げられるのは「喉嚢真菌症」です。

名前の通り、喉嚢に真菌などが感染することにより起こります。

暖かい季節に厩舎で飼育されている馬での発生頻度が高いと言われています。

喉嚢内において真菌が増殖し、その病巣が喉嚢粘膜下を走行する血管(特に内頸動脈)に達すると、血管壁が損傷を受け、出血します。鼻孔からの出血で初めて気づく場合が大半です。

喉嚢真菌症の発生頻度は決して多くはありませんが、増殖した真菌の菌糸が血管壁に侵入し動脈が破綻することで、致死的な大量出血を招くこともあります。

軽度の出血では内視鏡下で真菌巣の洗浄や抗真菌薬の投与により治癒しますが、早期に発見し診断・治癒しないと命にかかわる病気です。

外科的には患部を走行する動脈の結紮やステントにより血管の補強を行います。


なかなか現場では、出会わない喉嚢真菌症ですが、もしもの時のための準備が大切です。

起こってしまってからでは手遅れになり得る疾患なので、今回喉嚢の内視鏡検査について教えていただけてとても有意義な時間になりました。


次は一人でも実践できるように、日頃からイメージトレーニングして頑張りたいと思います。




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