創傷治癒について
馬は傷を作りやすい生き物です。
馬房内でぶつけたり、他の馬に蹴られたり、転倒したりと傷を作るのは日常茶飯事です。
そのような中で、早期発見をし早期に適切な処置をすることはとても大切なことです。
適切な処置をしなければ、傷の治りが大幅に遅れたり、馬の予後に大きく影響を与える可能性があります。
そのためにまず創傷について、また治癒の過程について書いていきたいと思います。
初めに傷を見つけた際、それがどのような傷かどうかよく観察することが重要です。擦過傷、挫創、挫傷、切創、裂傷など、サイズや深さ、部位によって治癒の進め方や処置が変わります。
治癒の過程は大きく分けて4つに分けられます。
①血液凝固期(かさぶた形成)
②炎症期(異物、細菌、壊死組織を除去。傷腫れ)
③増殖期(肉芽組織形成)
④成熟期(肉芽組織収縮)
創傷治癒には大きく分けて2つの種類があります。
・1次癒合(鋭い刃物や手術などで切った傷を合わせた縫合により、皮膚の組織が再生する癒合)
(創傷の治癒過程と創傷管理,臨床看護,18(5),p1-11,1992)
・2次癒合(様々な理由で創縁を開いたまま、肉芽組織を形成する癒合)
(創傷の治癒過程と創傷管理,臨床看護,18(5),p1-11,1992)
異物や感染などのリスクがなく、受傷してから時間が経ってない傷は、1次癒合で早期に治癒します。
一方、異物や感染のリスクがある傷や大きな組織の損傷などがある場合は開放創として2次癒合で治癒します。
この馬の場合
前方に転んだことにより、ぱっくり腕節の傷が開いてしまっています。
この場合傷口すべての縫合は、受傷してから時間が経っていることや動きやすい部位であること、傷口が大きいことから難しいため、2次癒合により治療していきます。
傷の部分を水道水か生理食塩水で異物、病原体、壊死組織をよく洗い流し、抗生物質配合の外用薬を塗布します。
毎日、洗浄・消毒をし、患部を清潔に保ち続けることが、治癒の近道です。
受傷してから13日後には、傷の部分は健康な肉芽組織が形成されています。
受傷してから22日後、肉芽組織は収縮し、傷口がだいぶ小さくなりました。
傷を早期発見、早期治療をするために毎日馬を観察し、触り、小さい傷でも見逃さないことがとても大切です。
外見ではたいしたことなさそうな傷でも、一気に深刻な状況になることもあります。
傷の種類を見極め、その傷にあった適切な処置をしていくことが、早期治癒につながっていきます。
傷が綺麗に治っていく過程を見るのはとてもいいものです。
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