手根管の腱鞘炎

手根管の腱鞘炎

先日、”膝ウラ”が腫れた馬を診てほしいと依頼をうけました。

2歳の牡で、

今までは大きな問題なく調教を進められていた馬でした。

触診すると、左手根管の腫脹がみられましたが

腫脹している部位の周囲の筋肉や骨に触診痛はみられず、

跛行はありませんでした。

腫脹がみられたのは、下写真矢印の部分です。

下の教科書の写真と比較すると、腫脹は軽度でした。

(ADAMS AND STASHAK’S LAMENESS IN HORSES 6th Edition)

数日間休みを入れ、

腫脹はあまり変わりませんでした。

跛行はみられないため、再び調教を行いましたが

調教後は更に手根管の腫脹が大きくなりました。

検査はレントゲン、エコー検査を行いました。

レントゲン検査

橈骨遠位掌側にもやもやと白くみえる部分があります。

エコー検査

横断像から手根管の腱鞘液増加が確認できました。

縦断像からは橈骨遠位掌側にやや高エコーとなる部分がみられました。

以上から

骨軟骨腫を疑う所見はみられますが、

診断できる明らかな所見はみられませんでした。

(ADAMS AND STASHAK’S LAMENESS IN HORSES 6th Edition)

教科書では骨軟骨腫があると

矢印の部分のように見える例が示されています。

本馬は調教を続けていき、今後症状が悪化する場合は

腱鞘鏡手術を行うことになりました。

骨軟骨腫について何例も症例を経験した先生に伺うと、

「骨軟骨腫による手根管腫脹や跛行は調教を始めた馬にしかみられない。

画像診断で明らかな所見がみられないことも多い。」

とのことでした。

本症例はまだ骨軟骨腫かどうか確定しておらず、

相談する先生によっても意見は様々です。

画像診断が難しい疾患だと感じました。

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