疝痛の症状と問診

疝痛の症状と問診

こんにちは

栗東では寒暖差が激しく

馬が疝痛を起こしています。

と言われて往診に行くことが増えました。



疝痛とは腹痛を伴う病気を総称したものです。



軽度なものであれば、内科療法で治療できますが、

重度な症例では手術が必要になったり、死に至ることもあります。




疝痛を発症した馬は以下のような症状を示します。

・前搔き

・腹部を後肢で蹴る・噛む

・寝起きを繰り返す

・横臥

・転倒

・排尿姿勢

・発汗

・体温上昇

・心拍数、呼吸数の増加

・食欲廃絶




横臥する馬の様子



この馬は朝運動後に疝痛を発症し、横になってしまいました。





獣医師が牧場に到着するまで、

牧場の方には、疝痛馬を10-15分程度運動をさせてもらい、

運動から戻ってきてからは、馬房内で馬の状態が急変しないか、注意して見てもらいます。


運動することで腸の蠕動運動が亢進し、疝痛症状が緩和されることがあります。




疝痛の原因としては

・痙攣疝

・便秘疝(結腸便秘、盲腸便秘など)

・過食疝

・風気疝(ガス疝)

・変位疝(結腸変位、腸捻転、鼠径ヘルニアなど)

・寄生疝

などがあります。






また

・腹膜炎

・腸炎

・胃潰瘍

・横紋筋融解症(スクミ、コズミ)

などでも疝痛症状を示すことがあります。



しかし、症状だけで、上記のたくさんの疝痛の原因から診断をすることは大変難しいです。





手術が必要な変位疝であっても軽度の疝痛症状しか示さない馬もいれば、

軽度の風気疝であっても馬房内で仰向けになってひっくりかえるほど強い疝痛症状を示す馬もいます。

疝痛が複数の原因で引き起こされる場合もあります。



そのため、馬の症状だけでなく、色々な情報を得る必要があります。




問診では

・いつ発症したか?

・どれくらい痛いか?

・食欲はあるか?ないか?

・ボロ(糞)は出ているか?

・ボロの量や硬さ、形、色はどうか?

さく癖などの悪癖はあるか?

・いつ駆虫をしたか?

・体温、心拍数、呼吸数はどれくらいか?

・既往歴はあるか?

・どんな運動をしているか?

・飼料変更があったか?

などを確認します。




馬房で横臥していた先ほどの馬は、

朝の飼いをつけたときから食欲がないこと、

ボロが硬く小さいこと、

球節のケガのため運動ができていないこと、


が確認できました。




この疝痛馬では、問診の後に一般身体検査、直腸検査を実施。

結腸便秘を疑い、

経鼻カテーテルにて胃に流動パラフィンとお湯を導入し、バナミン(フルニキシンメグルミン)の投薬と補液を行いました。

疝痛の検査や治療については、また別の機会に書こうと思います。






問診で得られた情報から


発症からの経過時間に応じて補液の量を調整したり

使用する鎮痛剤の種類や量を変えたり

ボロの性状から便秘や腸炎を疑うこともあります。


また、さく癖(グイッポ)をする馬は疝痛になりやすい傾向があります。



直近で飼料変更などがあった場合、

腸内細菌の異常発酵が起こり、疝痛になることもあります。

また、草の好き嫌いで食欲が無いようにみえることもあります。





このように、

馬の状態をその場でできるかぎり正確に知ることで、適切な治療を選択することができます。

また、馬がどれだけ痛がっているのかを判断し、その痛みを緩和、コントロールすることも重要です。






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わたし自身、昔怪我で手術を受けたことがあるのですが、

手術が終わった日の夜に傷が痛んで、夜中の2時に泣く泣くナースコールを押しました。

鎮痛剤を点滴から入れてもらい、やっと寝ることができました。


その晩わたしは、一人で痛みに耐えるつらさと、鎮痛剤の効果を実感しました。


薬は上手に使っていきたいですね。

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NM


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