
ウマの悪癖
去る10月17日~18日にオータムセールが行われました。
2022年1歳馬セールはオータムセールで最後になります。
4月から入社した私もセリのレポジトリー業務に携わりました。
頭数が多いので、レポジトリー期間はとても忙しいのですが、
その分多くの経験を積むことができました。
ところで、セリ会場では「この馬にはさく癖がございます。」や
「この馬には旋回癖がございます。」などという言葉を聞きます。
さく癖とは、馬が壁の出っ張りや柵の縁などに上顎の前歯をひっかけて顎を引き、
音を出しながら空気を飲み込む動作のことをいいます。

(画像:「動物行動図説」,朝倉書店,p154より,ウマ・①さく癖)
さく癖を慢性的に続けると、疝痛の発症、切歯の異常な磨耗、
胃潰瘍などのリスクが増加します。
旋回癖とは、馬が馬房内などでぐるぐる回り続けてしまうことをいいます。
旋回癖を続けていると、蹄の摩耗や体力消費、肢の不調などのリスクが増加します。
さく癖、旋回癖などの悪癖は馬の健康に悪影響を及ぼすとされて忌避されています。
馬を売買するセリの多くにおいても、
これら「悪癖」の有無を開示することが求められています。
今回は、その悪癖についてお話したいと思います。
さく癖や旋回癖などの悪癖は常同行動の一種です。
常同行動とは規則的に繰り返される同じような行動のうち、
普通では見られず、目的、機能がはっきりしない行動のことをいいます。
長期の葛藤や欲求不満状態に由来するといわれています。
一部の研究では常同行動を行うことで苦痛が解消された可能性が示唆され、
常同行動が不適切環境に対する適応行動であるとする仮説もあります。
しかしながら、上記のさく癖のようにこれらの行動によって
馬の健康に悪影響を及ぼす可能性があるため、
常同行動を行わないで済むような飼養環境の整備やストレス排除が重要になります。
MK