喉頭片麻痺と合併症について
こんにちは。
北海道は夏が終わり、日もだんだん短くなってきました。
今回は喉頭片麻痺に関する話をしようと思います。
喉頭片麻痺は
披裂軟骨を外転させる機能を担う筋肉が麻痺することにより
気道狭窄、吸気性呼吸障害を起こす疾患です。
喉頭片麻痺の馬では下の写真のように
左披裂軟骨小角突起(黄矢印)と声帯(白矢印)の弛緩がみられます。
それにより気管の入り口が狭くなっています。
(若馬における咽喉頭部内視鏡検査所見について 北獣医師会 2013)
この疾患に伴う症状として以下のものが挙げられます。
・騎乗時に喉からヒューヒュー音が鳴る(異常呼吸音)。
・呼吸が苦しそうで調教スピードをあげられない(運動不耐性)。
それらの症状は競走馬としてトレーニングを積んでいく上で、問題となります。
治療はTie-back術という方法により、
披裂軟骨の外転を維持した状態にします。
術後に運動復帰し、競走馬として活躍できる馬もいます。
ただ、気管が開いたままの状態になるため、
誤嚥や発咳、披裂軟骨炎などリスクがあります。
先日、以前Tie-back術を行った馬に発咳がみられ、内視鏡検査を行いました。
3歳の牡、地方競馬で出走歴がありました。
症状がみられる以前の術後検査では経過は良好とのことでした。
今回の検査では鼻腔と気管内に食渣(草の食べカス)がみられ、
左披裂軟骨小角突起に炎症(びらん)がみられました(矢印部分)。
治療は、運動を休み、抗生物質投与を10日間行いました。
その後発咳がみられることは少なくなり、
小角突起のびらんは良化しました。
術後の合併症として披裂軟骨炎は注意が必要な疾患です。
手術後に活躍できる馬もいますが、中には合併症で苦しむ馬もいます。
喉頭片麻痺は術後管理の観点からも難しい疾患であると感じました。
UR