披裂軟骨小角突起の亜脱臼について

披裂軟骨小角突起の亜脱臼について

今日は喉のお話です。

 

先日、喉が鳴るという症状で、内視鏡検査を行った馬がいました。

 

喉の動きをよく見ると、

通常は左右の披裂軟骨小角突起の先端がピッタリ合わさって動くのですが、

 

下の写真の場合、少しわかりにくいのですが

全開時に左側(写真では向かって右側)の披裂軟骨小角突起の先端がやや腹側にズレて、

先端部分が重なっているのが確認できました(白矢印)。

 

 

これは、披裂軟骨小角突起の亜脱臼と呼ばれるものです。

 

英語では、

ventroaxial luxation of the apex of the corniculate process of the arytenoid cartilage

axial displacement of the aryepiglotic folds and axial overriding of the corniculate cartilage

と呼ばれるそうです。

 

 

(画像: “Ventroaxial Luxation of the Apex of the Corniculate Process of the Arytenoid Cartilage in Resting Horses During Induced Swallowing or Nasal Occlusion” Veterinary Surgery 36:210-213, 2007 より) 

 

 

原因について、

人間では全身麻酔の際に挿入する気管チューブによる圧迫が原因とされていますが、

馬では横披裂筋の萎縮や、横披裂靭帯の幅が左右非対称に太くなることで起きるという説もありますが、
はっきりとはわかっていません。

 

 

披裂軟骨小角突起の亜脱臼があると、

特に全開時に運動時に構造がしっかり保てず、

これによってノイズが生じ、いわゆる喉鳴りの原因に成り得ます。

 

そしてこの疾患の問題は、

これといった対策や治療法が無いということです。

 

残念ながら、手術でも効果は期待できません。

 

もちろん、この疾患があるからといって、

必ずしもパフォーマンスに影響するというわけではなく、

レースで結果を出す馬もいますので、

状態を見ながら 調教を行っていくということになります。

 

 

「喉が鳴る」といった喉の異常は 競走馬で頻繁に遭遇するのですが、

必ずしも「治療すれば良化する」というものばかりではなく、

進行していくもの・対処が出来ないもの等に遭遇する度に、非常にもどかしく感じます。

 

ただ医療も日々進歩していますので、

これから先に より多くの馬をサポートしていけるように、

現場でもできる限りの対応をしていきたいと思います。

 

 

S

 

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