上腕骨の骨折
ここ最近、他の場所から移動してきた馬です。
乗り始めた日に、キャンターで20歩程度行ったところで、右前肢に顕著な跛行を示しました。
ほとんど負重できず、馬房まで帰ってくるのもやっとだったそう。
往診時もこの状態。ここからは動きたくはない様子です。
なので馬房でレントゲン撮影をしたところ、
上腕骨の骨折がみられました。
患肢を持ち上げ、内側から外側に向けて撮っています。
正常なレントゲン画像はこちら。
(参照:Clinical Radiology of the Horse Third Edition p.305)
上腕骨には、棘上筋や棘下筋、肩甲下筋など、多くの筋肉が付着しています。
左図:外側、右図:内側。(参照:第二次増訂改版 家畜比較解剖図説 上巻 p.137 一部加工(筋肉名を挿入))
深部の筋。(参照:第二次増訂改版 家畜比較解剖図説 上巻 p.137 一部加工(筋肉名を挿入))
前肢を開く・方向を変えるなど、調教中のちょっとした動きで、ねじれるような負荷がかかることにより、骨折してしまうようです。
横骨折、斜骨折などがみられますが、そのためか、もっとも多いのは螺旋骨折なのだそうです。
螺旋骨折の場合、上腕骨に付着した筋肉の牽引のために、騎乗変位(over riding)がしばしばみられます(遠位の骨折片が尾側に、近位の骨折片は頭側に変位します。今回の症例もそうでした)。
また、上腕骨に沿って橈骨神経が走っており、上腕骨骨折の際には、神経機能障害の程度を評価することも、その後のために重要なのだそうです。
上腕骨骨折の治療には、手術と保存療法があります。
しかし安楽殺を選択されることが、もっとも多いそうです。
体重を支える重要な骨であり、また筋肉の牽引も強いため、正しい位置に整復したり、そのまま治癒を期待するのは難しいのだと思います。
この馬も、残念ながら安楽殺となりました。
おでこに大きなできものができてしまったメッシ。
動物病院で検査をしてもらったところ、「肥満細胞腫」でした。
切除手術をお願いし、
無事生還。ガッツリ刈られています。
腫瘍の性質上、本当はもっとしっかりマージンを取って切除したかったそうなのですが、
瞼にかかってしまうと、眼を閉じることに支障が出てしまうため、できる範囲だけで取りました、と先生。
また、単純に切除し頭部の皮膚を寄せるだけだと、かなり引っ張られてしまうため、
皮弁形成術を用いて皮膚を縫合したとのこと。
違う種類の動物でも、話を聞くと勉強になります。
エリザベスカラーと、外に遊びに行けないためにものすごく不満そうなメッシですが
抜糸まで、しばらくの辛抱です。
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