鼻ネジ
体重500kgを超える場合もあるサラブレッド競走馬。
そんな馬達はまさに全身筋肉の塊、
パワーも人間の比ではなく、
馬が本気を出したら人間が抑えられるわけはありません。
それでも現場では処置や治療が必要な時があります。
そんな時に頼れる相棒 ”鼻ネジ”を、
今日はご紹介します。
今使っている鼻ネジがこちら。
使い方は簡単、
鼻のこの部分を捻って掴みます。
縄ではなくチェーンがついているタイプもあり、
縄より滑りにくいというメリットがある一方で
鼻の組織にダメージを与えやすいというデメリットもあるそうです。
他に捻るタイプの他に、挟むタイプもあります。
ちなみに鼻のこの部分には、
下の図のように筋肉や軟骨が存在しています。
(画像:家畜比較解剖図説 上巻 新編第1版 p.113)
(画像:家畜比較解剖図説 下巻 新編第1版 p.3)
こんなところを捻るなんて、
「鼻ネジって痛いのでは?」と思ってしまいますが…
鼻ネジをした後は心拍数が下がるという研究報告があったり、
また2回目以降に鼻ネジをされる馬でも嫌がる様子が見られないことから、
鼻ネジによって馬が強い痛みを感じているということは無いそうです。
具体的には以下のような効果があるとされています。
・頭の動きを抑制出来る
・馬の気を逸らすことが出来る
・体内でエンドルフィンが放出される(鎮痛効果等)
エンドルフィンが放出されるメカニズムは
はっきりとは解明されていないようですが、
鼻ネジによる圧が、鍼や指圧のように働いて
起きる反応であると考えられています。
またエンドルフィンは、
鼻ネジをしてから3−5分経過してから放出されるそうです。
普段の治療は、何もなくて処置できるケースもあれば、
「鼻ネジだけ使う」「枠場を使う」「鎮静剤を使う」「色々併用する」など
工夫が必要なケースがあります。
獣医師に限りませんが、
馬に関わる仕事は、危険と隣り合わせの仕事です。
その都度状況に合わせて最適な方法を選択し、
馬への負担が少なく、かつ安全に、
治療に当たっていきたいと思います。
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