輸送の際にできること
南関東所属の競走馬で、
岩手や兵庫など遠く離れた場所にある競馬場に遠征に行く馬がいます。
その時に「輸送する前に、抗生剤とか何か薬あげた方がいいの?」
と聞かれることがあったので、今日は輸送について少し考えてみたいと思います。
まずよく知られている輸送後の輸送熱発症のメカニズムとしては、
・輸送によるストレスで免疫機能が低下する
・狭い空間内で塵などの粒子や糞尿からの刺激物によって、気道の粘液が過剰に賛成されて細菌の温床になる
・通常 首を下げたり粘膜の線毛運動によって気道から細菌などを気道から排出するクリアランス機能が抑制される
ことによって、
普段 上部気道に存在している常在菌(主に連鎖球菌)が、
肺の中で増殖し、細菌感染が起きて発症すると考えられています。
そして20時間以上もしくは800km以上の輸送になると、
肺炎などを発症するリスクが高くなるとされています。
冒頭にお話しした競馬の遠征の場合、
例えば 船橋競馬場から盛岡/園田競馬場までは
いずれも約550km / 6-7時間(陸路、google検索)程かかるようなので、
上記の基準を照らし合わせても、
この位の距離/時間の遠征であれば出発前に積極的に抗生剤を投与する必要はないと考えます。
また競馬のための輸送であれば、そもそもレース前日以降は投薬などの治療は禁止事項ですし、
どの抗生剤を選択するかについては 効果や耐性菌が出現するリスクなども含めて考える必要があるため、
「単に輸送の時は予防の注射すればOK!」というものでもありません。
それでも “リスクを減らすためにできることがあればしておきたい!”
と思うのは当然のことで、心情として非常によくわかります。
輸送に関して気をつけることの例として、
輸送の前であれば
・馬インフルエンザウィルスや馬ヘルペスウィルス(馬鼻肺炎)などの呼吸器疾患に対するワクチンは、前もってきちんと接種しておく
・胃潰瘍を予防する薬を投与しておく
輸送時には
・温度管理に注意を払う(10℃前後が良い)
・換気を行う
・水分量の多い飼料 や 飼料を水に浸してから与える
・輸送区間ごとに頭を下げる事ができる状態にしてあげる
・水分補給を行う(脱水予防のためには最低でも4-8時間毎)
・長距離&長時間の移動にならないようにする
などがあります。
長時間の移動は、人間でも非常に疲れますよね…。
わざわざ遠征に行くからには、
本来の力をしっかり発揮できるよう頑張ってもらいたいと、私も願っています!
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