横紋筋融解症

横紋筋融解症

横紋筋融解症という病気があります。
 
 
スクミ、タイイングアップ(Tying-up)、月曜病、などと呼ばれることもあります。
 
 
 
症状としては、硬直した歩様、発汗、呼吸数の増加、脱水、筋肉の硬化性腫脹、熱感、排尿姿勢などがみられます。
 
 
通常は臀部、大腿二頭筋、半腱半膜用筋に発症することが多いようです。
 
 
 
過剰な運動や、体の未熟な馬に対する激しい運動、輸送によるストレスにより引き起こされます。
 
麻酔時や放牧時、休養明けの運動後(=月曜病と呼ばれる所以!)にみられることもあるようです。
 
 
また、過剰な濃厚飼料の供給や、電解質の不足も原因の一つとなります。
 
 
 
メカニズムははっきりと分かっていません。
 
代謝により発生した乳酸が原因と言われることもありますが、実際に発症した馬では、乳酸性アシドーシスはあまり見られず、軽度である場合が多いとされています。
 
 
一説には、ミトコンドリアの代謝などにより産生された活性酸素が筋線維を傷害することにより発症するとも言われています。
 
そうすることで細胞外よりカルシウムが細胞内に流入し、過度のカルシウムが局所的に筋繊維の過収縮を生じさせ、物理的に破綻させてしまうそうです。
 
 
広範囲に筋壊死が生じた場合には、ミオグロビンなどが筋細胞内から流出し、全身に影響を及ぼします。
 
ミオグロビンが尿細管内に沈着することで、腎尿細管傷害を生じさせ、腎不全、ひいてはDICや多臓器不全などの重篤な全身症状を起こすこともあるのです。
 
 
 
 
 
横紋筋融解症が疑われる場合、血液検査をして、筋酵素の上昇を確認します。
 
 
 
実際の検査結果がこちらです。
 

 
このうち筋酵素と呼ばれるのは、CK、GOT、LDHです。
 
正常値は、CK:80~900、GOT:200~1200、LDH:350~1200。
 
よって、CK、GOTが上昇していることが分かります。
 
 
 
 
治療としては、まずは全身状態を把握します。脱水の程度、体温、腸蠕動、食思の有無を確認し、運動の程度も確認します。
 
 
重篤な場合、横臥し腸蠕動・食思の廃絶がみられることもあります。これは疝痛の症状と類似しているため、誤診しないよう注意が必要です。
 
血液検査を行うのは、そういった意味もあります。
 
 
そして脱水を改善し腎不全を防ぐために、輸液を行います。
 
 
鎮痛剤としては、おもにNSAIDsを用いますが、起立不能など重篤な場合は、ステロイドを投与することもあります。
(ただし、NSAIDsの副作用には腎不全があるため、注意が必要です…)
 
 
 
その後、急性の場合には無理せず休息させます。ただし馬房にずっと入れておくのも良くないため、小パドックで放牧したり、短時間の曳き馬を行ったりします。
 
 
その後は様子を見ながら、運動を徐々に戻していきます。
 
 
 
慢性の場合にも、完全に休養させるのではなく、曳き馬などから徐々に運動を始めていきます。
 
 
また、ビタミンEやセレンの含まれた薬品を投与し、筋肉の修復を促す場合もあります。
 
 
 
 
上記の血液検査した馬は、まだ未出走の2歳。
 
ごく軽い駈歩程度の運動でしたが、騎乗後30分程度で硬直した歩様をみせました。
 
 
おそらく、正しいフォームで走らせたところ、まだ発達していない筋肉を急激に使うこととなり、発症したのではないか?と考えられます。
 
そのため輸液し、NSAIDsを投与したところ、次の日には回復しました(その後すぐに移動したため、経過は追えませんでしたが、聞く限り順調に運動を進めているとのこと)。
 
 
 
競走馬デビューするまでには、いろいろな不調と戦わなければならないこともあるのです…
 
 
 
 
 
 
 
 
かわいそうな捨て猫を演出するメッシ。
 

 
 
 
 
 
 
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