ウォブラー症候群(腰萎)
先日、腰萎(ウォブラー症候群)の疑いのある当歳馬の頸部レントゲン撮影を行いました。
第3頚椎と第4頚椎間の 脊髄が通る脊柱管の内径(矢印、赤線)が他より狭く、
頭側椎体最大幅(黄線)の半分以下でした。
確定診断ではありませんが、ここ(矢印)で狭窄が起こっている可能性が高いです。
頸部レントゲンの撮り方は、以前書きましたので、今回はウォブラー症候群について書きます。
まず、ウォブラーとは、動揺歩様(フラフラした歩様)を示す動物のことを表現する用語です。
動揺歩様は、肢の位置を感じることの不能(知覚神経の障害)または
適切な神経情報を肢をコントロールしている筋肉へ供給することの不能(運動神経の障害)
により生じます。
ウォブラー症候群では 次の4つの原発領域が影響を受けます。
1.脳と脳幹
脳損傷によるウォブラー症候群では、通常全4肢の異常運動を示します。
損傷の位置によって、様々な脳神経症状(視覚障害、嚥下障害、頭部の傾きなど)
が現れます。
2.頸部脊髄
頸部損傷では、一般的に全4肢の異常運動を示しますが、脊髄の中で
後肢に情報を与えるニューロンが前肢のものよりも外側(表層)にあるため、
後肢が最初に影響を受けます。
頸椎狭窄症(Cervical Vertebral Stenosis, CVS)は、脊柱管が十分に大きく成長しなかったり、
異常な成長により 脊髄が圧迫されて起こります。
頸椎奇形(Cervical Vertebral Malformation, CVM)または、椎骨の奇形、椎骨の配列異常、
非常に小さな脊柱管、関節面または椎体の椎窩の変化は、
若馬(当歳〜2歳)に起こりやすいです。
骨関節症・変形性関節症は、古馬(5歳以上)に起こりやすく、滑液の増大によって
脊髄圧迫を起こします。
3.背部と骨盤
馬変性性脊髄症(Equine Degenerative Myelopathy, EDM)は、通常2歳以上の馬にみられ、
固有受容感覚(自分の肢が空間内のどこにあるかを感じる能力)が最初に影響を受け、
後躯が最も重篤な影響を受けます。
原因はおそらく神経組織の酸化的損傷と考えられており、ビタミンEによって
進行が止められたという報告があるそうです。
また、EDMでは軽度の近くの鈍麻(注意力の減少)が認められ、
CVMではこれはないとされています。
4.広汎的(1つ以上の問題がある場合)
馬原虫性脊髄脳炎(Equine Protozoal Myeloencephalitis, EPM)
馬ヘルペス脊髄症(Equine Herpes virus Myelopathy, EHM) など。
長くなりましたので、この辺で終わります。
次回は検査方法を書きましょう。多分。
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